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仙台地方裁判所 昭和32年(行モ)4号 決定 1957年12月28日

申立人 佐藤とよ

被申立人 宮城県公安委員会

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

「昭和三十二年十一月二十日、被申立人が申立人に対し、申立人の営業を決定書送達の日(昭和三十二年十二月二十三日)から八十日間停止する行政処分の執行を、当裁判所昭和三十二年(行)第二五号営業停止決定取消請求事件の判決があるまで停止する」との裁判を求める旨申立て、その理由の要旨は、申立人は肩書住所地で簡易料理店を営む者であるが、被申立人は昭和三十二年十二月二十日、申立人に対し、風俗営業取締法施行条例第二十一条の規定に違反して、時間外営業をし、同条令第二十三条第一項第三号の規定に違反して、十八歳未満の者を、直接客の接待をする業務に従事させ、同条令第二十五条第三号の規定に違反して、自己の雇用する女給松田ハツエが不特定人たる客と売いんをなすに当り、その情を知りながら営利の目的のもとに自己営業所を提供して、営業所で卑わいな行為をなさしめ、更に、同条第八号の規定に違反して、松田ハツエの売いんの相手方たる客を営業所に宿泊させるなどして、著しく善良の風俗を害する行為をしたという理由で決定書送達の日から八十日間営業の停止を命じ、この決定書は、同月二十三日送達された。申立人に、右根拠となつたような事実はないし、営業停止処分の前提たる聴聞手続にも違法がある。即ち、本件営業停止処分に関する聴聞に際しては、申立人が風俗営業取締法施行条令に違反したことがない旨争つていたのであるから、事の真否を究明しなければならないのに、警察員の申告のみを信用して、決定したのは違法である。

そこで申立人は、被申立人を被告とし、仙台地方裁判所に本件行政処分の取消を訴求しているが(同裁判所昭和三十二年(行)第二五号)、右判決があるまで営業停止のまま放置されるならば、年末年始をひかえて、申立人は償うことのできない損害を蒙るので、右損害を避けるため緊急の必要があるから、営業停止処分の執行停止を求めるため、本申立に及んだというのである。

年末年始をひかえて、簡易料理店営業の停止を命ぜられたことはその他の期間に比して、損害が大きいことが推察されるけれども、これをもつて償うことのできない損害が生ずるとは認め難いし、その他償うことができない損害が発生することに関し、何らの疎明もないから、右処分の執行の停止を求める本件申立は理由がないので、これを却下し、申立費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 新妻太郎 桝田六郎 平川浩子)

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